筆者は、俳句という文芸は、作者をまったく知らないより、少しぐらい知っていたほうがより深く理解できると思っている。
もちろん、知りすぎ、はかえってマイナスになることもある。ここのところが
難しい。
俳句はもともと座の文芸だから、顔を付き合わせて、それぞれの句を理解し合ったものだと思う。
少しは世間話もしたであろう。
そういった情報が、俳句を理解する上での潤滑油になる。

話が本題から逸れたが、要するに、ここに掲げた句は面白いのである。
一般論としても面白い。夫と妻とちぐはぐに生きている夫婦は多いはずである。

だが、もっとも面白い部分といってよい、この句を作るに至った作者夫婦の「ちぐはぐに生き」てきた実景というものが見えない無念さを思うのである。
筆者にとって、そこまでのお付き合いがなかったということである。それが残念なのである。
蛇足ながら、下五「夫婦かな」は「めおとかな」と読みたい。