その瞬間を想像することができる。

エスカレーターの一段に二人並んで乗ってきた。母と子かもしれない。
待っているのは父親か。
二人並んで来たが、開口一番、一緒に「暑いよー」と叫んだのだ。
その声。
そこにいる人間を、具体的には語らず、暑さが来た、という捉え方が面白いのである。

「青芝」2019年9月号より。