キスマイ千賀(ジャニーズ)の句である。 
この句の面白さは、「雪の滑走路」という視覚的なものと「黒革の匂い」という嗅覚的なものとのぶつかり合ったところにうまれるリアリティの新鮮さである。
脈絡のない言葉のぶつかり合いは、わかりすぎるものではだめ。いっけんわからないようなものをぶつけ合うこと。それで、「ああ」とわかってもらえるものであれば、その効果は倍の力をもつ。
「雪の滑走路」、の雪には、匂いはない。匂いのない美しさは、どちらかというとフィクショナルである。ようするに、写真を見るような美しい情景があるばかりである。
それだけでは面白くない。
美しい情景にリアリティを与える必要がある。リアリティを与えるのがこの場合、匂いなのである。しかもクセのある匂いである。
クセのある匂いというものは、強烈なインパクトがある。生理的にイメージを喚起させる力がある。
美しい雪とは対照的に、クセのある黒革の匂いを持ってきた。作為的に美化したりしない。だから飾り気のない現実感が見えてくるのである。
そこがこの句の成功要因といってよい。