俳句とはつくづく偶然の賜り物だと思う。この句、作者の作為は全くといってよいほどない。
おそらく作者、野道を吟行して歩いていたら、あけびの可憐な花に出会った。ジロジロ見ていたら、通りかかった地元の人に、そんなによかったら持っていけ、と言われたのに違いない。土地の所有者なのかもしれない。
普通の人なら、あまり関心を持たないあけび。不思議に感じたのだろう。
そんな、作者と地元の人との素朴な会話を読み取ることができる。
そのあけびをもとにしたこれらの会話、和らいだ時間の過ぎ越しは本当に大切なものだと思う作者。あけびそのものの素朴な印象とも重なり、ほっこりする読者。心温まる情景である。濃美 2019.11