結社誌「対岸」2019年10月号より。
この作者については、一切不明ながら、この句の他にも、

吹き渡る風青青と稲は穂に
本塁打打つて涼しくハイタッチ
 
など、力の漲った作が並ぶ。好感を持って読ませていただいた。
支流より押し寄せてくる流れは激しさを感じさせる。その押し寄せる水が合流して大河になるところ、芦や雑草が生い茂っているのであろう。そして、そこには草いきれが立ち昇っていたというのだ。
関東なら利根川の情景であろうか。
「対岸」のメッカ、茨城県にもこういう情景の川はたくさんある。話はとぶが、この秋の台風では、関東一帯でも堤防が決壊し河川が氾濫、たいへんなことになったが、川というものの恐ろしさを改めて認識させられた。
むろんこの句は、あの災害の起こる前に作られたものであるが、そういった恐ろしい姿へと変貌する自然の可能性を予感させる句となっているのである。