優しい句である。そのまま読めばよい。
浜辺を歩いていると、貝殻や美しい小石に出会うことがある。そんなものを拾い、ハンカチに包む。べつにすごいものではないが、持ち帰りたかったのである。
持ち帰ってどうするというわけではないのだが、もしかすると、イラストの参考にでもしたかったのかもしれない。句の表現としては「石のかけら」「貝のかけら」でなく「海のかけら」としたことで詩的になった。
和田さんといえば、あの独特のイラストを思い浮かべる人は多いと思う。「ヘタウマ」の本家というのだろうか。本業イラストレーター、たくさんの本の装丁や雑誌の表紙などをこなし、ファンも多かった。
ハイライトというタバコのパッケージも作られたという。
そんな和田さんは映画が好きで、自身、監督もした。じつは、筆者はその映画のワンシーンの撮影現場を目撃したことがある。映画のタイトルは真田広之主演の「麻雀放浪記」、1984年作。当時、東京の根津に住んでいた筆者はたまたま町を歩いていて、銭湯の前で撮影しているところに出くわしたのである。
もちろん、完成後、映画館でこの映画はしっかり観た。評価も高いものだった。
10月11日、そんな和田さんの訃報が伝えられた。83歳。ご冥福をお祈りします。句集「白い嘘」より。