「プレバト」からもう一人ご紹介する。掲句の作者、村上さんは、番組では「フルポン村上」と言われる。フルーツポンチというお笑いグループの一人だから、そう言われる。
村上は1980年、茨城県の牛久市の生まれ。先ごろ話題になった大相撲力士の「稀勢の里」も同じ牛久の出身で1986年の生まれだ。
年齢からいうと梅沢富美男、東国原英夫両氏よりずっと若い。30歳ぐらいであるから、新しい感性が自由自在に羽ばたく時期である。掲句もそう。
「サイフォンに潰れる炎」とは、コーヒーを淹れるときにサイフォンを見つめていて気づいたことであろうが、「炎が潰れている」とは、面白い捉え方だ。炎が潰れるほど近くにサイフォンがあった。サイフォンの中は、どんどん沸騰し激しく泡立っていたことだろう。それに対して下五の季語は「花の雨」。桜を散らすほどの激しい雨である。炎も、サイフォンの湯も、外の花の雨も、それぞれに動きがある。動きはそれぞれ激しさを感じさせる。激しい動きは時間の推移を感じさせるのである。
部屋にサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」でも流れていたりしたら、いうまでもなくドラマのワンシーンを思わせる。そんな一句である。
村上さんには、以下のような句もある。

真夜中の花屋の灯り秋澄めり

この句の「灯り」「秋澄めり」もそうだが、掲句の「炎」「花の雨」もともに明るいが深い雰囲気がある。深いというのは、背景にドラマが感じられるということで、これは作者の持っているものから来るのであろう。