「点滴の父」というタイトルがあって、

       点滴を抜けば死ぬ人薔薇散華

という句があるから、いまわの際の父との別れのときを詠んだものとわかるのである。
臨死の父は何思う、といわれても、実際は何か思うほど冷静な意識があるかどうかわからない。
とはいえ、遺されたものからすれば、ドラマなどでその一瞬に自分の何十年間の思い出が走馬灯のように表れるというシーンがよくあるように、何かを思ってあの世に旅立ってほしいという願望がある。作者もまたそういう願望をもたれたから、こう詠まれたに違いない。
下五「真夜のほととぎす」が切なさを誘う。
未来図 2019.8