鶏が砂浴びをしているというのだから、
陽光もたっぷりと降り注いでいる日中であろう。ゆったりと時間が流れているのどかな昼の光のなか、鶏は「くう」という声を出して鳴いたというのだ。意味のない声のような気がする。意味のない声を発したというところに、この鶏の至福が込められていると思う。柔らかい言葉で表現したことによって、いかにも流れている時間ののどかさというものがよく表わされているのである。
秋麗2019.5