「短歌往来」2020年4月号より。

日本人がまだ新型コロナウイルスというものを十分理解できていなかったころ、あのクルーズ船問題が起こった。

横浜港に停泊した巨大なクルーズ船の映像を見るたび、船中で待機させられている大勢の乗客のことを思った。
船自体、動かすことができない。白を基調とした美しい船体。これを捕らわれた白鯨だといった。白鯨といえば、メルヴィルのモビーディックを思う。この見立ては鋭い。

松村正直さんは、朝日新聞2020年4月19日俳壇・歌壇の時評欄で、梅内さんのこの一連を取り上げている。

咳をする人が怒られる電車にて断罪をする寒さひろがる

消毒のジェルがすうッと乾きゆく不安や罪を忘れるごとく

中止する相談しつつ薄暗く靄のかかつた町を思へり

等を取り上げ、〈「断罪」「不安」「罪」といった言葉を用いて、私たちの怯えや苛立ちを浮き彫りにしている〉と指摘している。
筆者にとっても、共感を呼ぶ歌ばかりである。