西行は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、日本各地を歩いて和歌を詠んだ僧侶にして歌人として有名。
「嘆けとて月やはものを思はするかこ  ち顔なるわが涙かな」(「小倉百人一首」86番)
「願はくは花の下にて春死なむそのきさらきの望月のころ」
等の歌が知られている。
その西行が亡くなったのは、文治6年(1190)2月16日、73歳で息をひきとった。
掲句は、西行と同じように、今日は海、明日は山と、俳句作りのため毎日旅に出かけている私は、いつも独りで歩く日々なのだ。末尾「独り」は、重い言葉である。
寂しいぞ!
そんな気持ちを抱えて日本全国を歩いた西行、その孤独感は、今の私にもわかるような気がする。
そう思う作者。
作者は、「浮野」主宰・落合水尾さんの弟さん。2016年、明日は75歳の誕生日という日に亡くなられた。伊豆の下田に生き、俳句を詠んだ作者である。こんな句もある。

唯(ただ)生きるそのことが芸(げい)花木槿(はなむくげ)

句集「在るがまま」(2018年、北溟社刊)所収。