明日は3月3日、雛祭りである。
今もなん段もある雛段を設置し、みやびやかな雛人形を飾っている家庭がどのくらいあるかはわからないが、公共施設やホテルのロビーなどに飾られているのを目にすることがある。
見ると、やはり、その華やかさや懐かしさについうっとりするのは、筆者もまた日本人であり、そのDNAのせいであろうかと思ったりする。
いずれにしても、今後もなくならないでほしい日本の伝統行事の一つだ。
さて、掲句。作者の幼少期の思い出のシーンを詠んだものかもしれない。そう思わせるのは、「擦り剥きし膝」など、現代の子どもにはあまりふさわしくないように思うから。
最近よく「昭和している」などという言い方をテレビなどで見受けるが、この句のシーンはまさに「昭和している」であろう。
「膝を揃えて」雛人形の前に正座する子ども。
スカートの下に出ている膝小僧には擦り剥いた傷が見える。男の子同様、おてんばな時期ゆえ、仕方ないのだ。だが、膝を揃えて座っているところが愛らしい。
少女も、十年もたてばもっと女の子らしくなるのであろう。そして、雛人形のお姫様のように成人式を迎える。
そのような日が来るのは、けっして遠い先ではないのである。
句集「てっぺんの星」所収。