この句、上五「花の冷え」は季語ながら、すべてがこの言葉に収斂していく俳句だ。
花の冷え、つまり「花冷え」は、桜が咲いているころ、急に訪れる寒い陽気のことをいう。この句、そのように寒い桜の下で、友人と話をしていたのだろう。
花冷えが言葉を包み込むというのだから、どちらかというと、あまり愉快な話題にはなっていないようだ。もしかすると、言葉は途切れていたかもしれない。本来あるべき言葉が、小説などで表現されるような「・・・」だったともいえる。
中七、下五の「人の言葉を包み込む」、「花の冷え」とは、ちょっと複雑な心境小説を読むような深さがあると思うが、どうだろう。
読売新聞(2020.2.3)俳壇欄の書評に載っていた句集「ふりみだす」の1句。