句集「喝采」より。
「一病抱え」つつ生きている人は多い。一病もない人よりも、一病ぐらいあった方が、かえって体を気遣うぶん、長生きできる、という意見もある。一病息災である。
たしかに、見るからに頑健そうな人が、急に亡くなられることもあるし、その反対に、病いを抱えつつも長く生きておられる方もいる。その人は、薬を飲みつつ「もうすぐお迎えが来ます」などと苦笑いして見せるが、一向に倒れたという話を聞かないということはよくあること。
この句の作者は、百歳を越えたご長命な俳人の代表格である。(百弐歳は102歳)
一病抱えたものとして、今年もこのまま無事に春を迎えたいものです、という切実な祈りの心が、この句から伝わるのである。
筆者は、比奈夫先生の句は、ユーモアのセンスのある句が好きだが、この句はどちらかというと、生真面目な句である。生真面目だが、リアルに年齢をいうあたりに、少々ウイットが感じられる。