時々、何年も前に亡くなった俳人の名句を読みたくなる。
この句の作者、秋元不死男さんにお会いしたことはないと思う。(もしかすると、角川の賀詞交歓会のようなところでお見かけしたことがあるか?その程度である)
そんなご縁だが、私の中では好きな句の多い俳人の一人だ。
わが師・野澤節子は、好奇心旺盛な方で、演劇も好きだった。ある時、「常陸坊海尊」という本を見せて、この著者は、あの俳人の秋元不死男さんの妹さんよ、といわれた。
長くなるので、この話はこれくらいにするが、俳句を作る兄と劇作家の妹という兄妹は羨ましいと思った。
さて、その秋元さんの句。冬に入り、どこを見ても野原や田園など、枯れ草に覆われている。ものみなねむりの時なのだが、太陽だけは暖かい日差しを降り注いでいる。そんな中機敏に動くものが部屋の中にあった。時計である。しかもただの時計ではなく鳩時計だという。鳩時計は時間が来ると扉が開いて、ポッー、ポッポーと鳴いて時間を知らせてくれる。今、鳴き出した鳩時計。それをふと見ながら、部屋の中の鳩の可愛い動きと、それとは真逆の部屋の外の止まったような時間とのあわいに自分がいることに気づいたところから生まれた一句であると思う。句集「万座」所収。