小島てつを「人生が見えるから俳句(時々短歌)は面白い」ブログ版

最近、最新の優れた俳句(短歌)を紹介し、俳句(短歌)の幅の広さ、その奥深さを堪能していただけましたらありがたいです。これをきっかけに俳句(短歌)を作る人がふえてくれたら、最高です。

アーカイブ:2020/08

やみさうで雨の一日著莪(しゃが)の花 西本ひとみ

著莪の花。筆者は、以前、鎌倉を吟行したとき、寺院の奥を散策していて著莪の花を見つけた。鎌倉の市街地はからりと晴れやかだが、一歩、寺院の奥から山を登ってゆく道に入ると、なんとなく薄暗く中世の余韻がいまも残っているように感じた。そんな中世の寂しい風情とどこか

つむじ打つ銀杏(いちょう)青葉の雫(しずく)かな  河原地英武

「銀杏」といえば、「黄葉」と来るのが常道だが、作者は「青葉」をもってきた。その意外性。意外性は、しずくがぽつん💧と落ちてきて「つむじ打つ」たという、あの驚きにも重なる。この1句、五七五の詰まった言葉のなかに、「驚き」のみが表現されている。その単純さがよいと

渡良瀬の葦焼(よしやき)の空濃むらさき 川名久美子

結社誌「廻廊」を見ていたら、この句に出会った。2020年5・6月号掲載の句である。「廻廊」は、八染藍子さんが広島県廿日市市で出されている雑誌だ。まったく方向の異なる地域の出来事が詠まれ、掲載されていることに驚いた次第。作者は関東地方の方なのであろうか。渡良瀬遊

花びらの吹かれ色増す酔芙蓉 加古宗也

酔芙蓉の花びらが、風に乗って揺れるたびに、色を少しずつ加えてゆくようだという句。もちろん、作者の感覚がそう捉えたのであって、事実ではない。しかし、事実以上に事実めいた印象を与えるところが、言葉の芸としての俳句の持ち味なのだ。酔芙蓉の花の美しさの真実を描い

赤まんまちぐはぐに生き夫婦かな  小島千架子

筆者は、俳句という文芸は、作者をまったく知らないより、少しぐらい知っていたほうがより深く理解できると思っている。もちろん、知りすぎ、はかえってマイナスになることもある。ここのところが難しい。俳句はもともと座の文芸だから、顔を付き合わせて、それぞれの句を理

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