小島てつを「人生が見えるから俳句は面白い」ブログ版

最近、最新の優れた俳句とその作者を紹介し、俳句の幅の広さ、その奥深さを堪能していただけましたらありがたいです。これをきっかけに俳句を作る人がふえてくれたら、最高です。

2019年11月

俳句とはつくづく偶然の賜り物だと思う。この句、作者の作為は全くといってよいほどない。
おそらく作者、野道を吟行して歩いていたら、あけびの可憐な花に出会った。ジロジロ見ていたら、通りかかった地元の人に、そんなによかったら持っていけ、と言われたのに違いない。土地の所有者なのかもしれない。
普通の人なら、あまり関心を持たないあけび。不思議に感じたのだろう。
そんな、作者と地元の人との素朴な会話を読み取ることができる。
そのあけびをもとにしたこれらの会話、和らいだ時間の過ぎ越しは本当に大切なものだと思う作者。あけびそのものの素朴な印象とも重なり、ほっこりする読者。心温まる情景である。濃美 2019.11

盆踊りの中でも、胡弓の調べにのせての踊りはたおやめぶりで哀愁をそそるところから、風の盆は全国的に知られるところとなった。場所は越中富山の八尾市。その地に筆者は未だ立ったことがないので、詳細は書けないが、想像以上の風景がひろがることは間違いないであろう。町は、祭り一色。近くの田畑に立つ案山子(かかし・かがし)たちもまた人間みたいに踊っているようだという。しかし、人間たちがたおやめぶりで踊るのに対し、案山子たちはその体のぎこちなさから、「男踊り」だというのだ。こういう捉え方に、作者のささやかなユーモア精神が潜んでいる。
とまれ、八尾の町は人間も案山子も踊りに包まれる。まこと壮観。
作者は法律事務所を経営するかたわら、「風の道」主宰として俳人としても活躍されておられる。
風の道 2019.11


結社誌「対岸」2019年10月号より。
この作者については、一切不明ながら、この句の他にも、

吹き渡る風青青と稲は穂に
本塁打打つて涼しくハイタッチ
 
など、力の漲った作が並ぶ。好感を持って読ませていただいた。
支流より押し寄せてくる流れは激しさを感じさせる。その押し寄せる水が合流して大河になるところ、芦や雑草が生い茂っているのであろう。そして、そこには草いきれが立ち昇っていたというのだ。
関東なら利根川の情景であろうか。
「対岸」のメッカ、茨城県にもこういう情景の川はたくさんある。話はとぶが、この秋の台風では、関東一帯でも堤防が決壊し河川が氾濫、たいへんなことになったが、川というものの恐ろしさを改めて認識させられた。
むろんこの句は、あの災害の起こる前に作られたものであるが、そういった恐ろしい姿へと変貌する自然の可能性を予感させる句となっているのである。



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