も60代に入った。自身の感覚では、少しも高齢者とは思わないのである。これは俳句という世界に身を置いているからなのかもしれない。自分よりご高齢の方で元気な人がたいへん多いのである。むしろ、60代も「若造」の部類に入ってしまうくらいである。が、一般社会の中では、
アーカイブ:2019/10
板の間を風よく通る心太 左髙冨美
「心太(ところてん)」は、先の「冷奴」とともに筆者の好物とする夏の食品であり、こういう句に出会うと、つい立ち止まってしまうのである。トコロテンには「酢」が欠かせない。トコロテンは夏の季語だが、酢がきいていてこその涼味なのである。(じっさい、冬に食べてもそ
冷奴(ひややっこ)崩してよりの無礼講 栗田百子
「ひややっこ」という言葉は、美しい。美しいから、現代の若い人にはわかるかな、と考えてしまうが、筆者も渋谷あたりに勤めていたころ、昼定食の店に行くと、壁に貼られた品書きに冷奴などと書かれているから、ふつう「豆腐」というのであるが、自然とその品のよい名称を覚
背で囲み背で話し合う焚き火かな 変哲(小沢昭一)
変哲こと小沢昭一さんの句である。小沢さんは、「東京やなぎ句会」のメンバーのお一人。ほかに永六輔や桂米朝、江國滋などがいた。選者には俳人の黒田杏子さんや中原道夫さんらが招かれて、日本橋三越劇場で華やかに公開句会をやっていた。小沢さんは、一年分の句をまとめて