「おい、○○め」は、癌に対する呼びかけ。「酌みかはさうぜ」は一緒に飲もうぜ、とまるで親しい友人に語りかけているようだ。しかし、その相手は癌だ。巧みな擬人化が微苦笑をさそう。逃れたくても逃れられない病苦、喘ぐようなつぶやきである。そして下五「秋の酒」は季語
アーカイブ:2019/09
虫の夜の星空に浮く地球かな 大峯あきら
35度あった気温がここに来て一気に5度ぐらい下がった。昼の蝉の鳴き声は消え、夜の虫の鳴き声へと急速にかわったこのごろである。さて、掲句。虫は静かな声で鳴きとおしている。ここからここまでという堺目がなく、闇という闇すべてで鳴き響いている。まるで闇全体が虫の世界
義経堂木の根に溜まる秋の雨 川崎展宏
義経堂は青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩にある義経寺をいう。平泉を離れた源義経は、ここで三日三晩聖観音に祈り、やがて北海道に渡ったという伝説があるという。本州最北端の鄙びた寺にそぼ降る秋の雨も、やがて木の根の窪みに溜まり、鈍色の空を映して義経の行く末を暗示して
夜の蝉むづかりて鳴きはじめたり 正木ゆう子
昨夜台風の影響で、ベランダの植木鉢など、いくつか倒れていた。今も風が強い。たしかに風台風だったのだ。それはさておき。今年は暑さのせいか、蝉がよく鳴いているのを聞いた。蝉は朝から鳴き出し、昼、夜と鳴き継ぐ。その時間によって、蝉の風情も変わる。掲句は、夜に鳴