加藤耕子さんの第7句集「空と海」所収の句である。2016年の発行。時間軸と空間軸を大きく捉え過去と現在の融合したような句が増えているように思う。掲句は「太古」と今が融合して、水というものに遠い歴史の匂いを感じとっているようなところが面白い。句の題材が泉である
アーカイブ:2019/08
メタセコイアの化石しみじみ冷房館 山﨑千枝子
メタセコイアは樹木の名前、落葉高木の杉とのこと。夏に緑の美しい枝葉を広げるさわやかな樹木。掲句はその化石というから、何万年か過去の石に姿を遺したものを指している。その名前はハイカラながら、長い歴史があることがわかる。メタセコイアの化石が資料館に展示されて
耳揃へ天の声聴く燕子花(かきつばた) 有馬朗人
燕子花は、美術好きな人には尾形光琳の屏風絵で知られた花だが、案外俳句で成功したものは少ない。この句、燕子花が耳を揃えて天の声を聴いているという。何とも美しい捉え方であるといえよう。燕子花の大きな花弁を、耳、と捉えたのであろうか。花弁は藍色や紫色という、天
楤(たら)の芽や谷の底より水の音 鈴木 勉
上五「楤の芽」とは、まことに小さいものを描く。かと思うと、中七・下五では一転して大景が描写される。谷底から響いてくるのは水の音である。水の音が、どんな音をしていたか。きっと側に立って聴いていると、凄まじいものであったに違いない。とはいえ、谷底というから、