河童忌は芥川龍之介の命日。7月24日。芥川は文豪だ。くらべて、私は文もうまく書けない、記憶力もあてにできない、あわれな中年男、といったような自嘲のの匂いがこの句にはある。ある要件があり、その時は、手紙を出そうと思うのだが、雑事にかまけて忘れてしまうことが多
アーカイブ:2019/08
蝉しぐれ小指より紐垂れてゐる 鳥居真里子
蝉しぐれのにぎやかな鳴き声が聞こえる。その下にいる人の小指からは紐が垂れているという。何ゆえ垂れるのかはわからない。ほんとは垂れていないのだ。が、幻想(シュール)の中に小指と紐とが見えたのだ。そういうことで考えていくと、いささかエロティックな雰囲気がかもし
樹も石も縄巻けば神滝しぶき 瀧 春樹
「樹も石も」、たしかに縄が巻かれるとおごそかな雰囲気になるから不思議だ。神の本体と見なされるのである。一番よい見本が、伊勢の二見ヶ浦の夫婦岩であろう。2つの岩の間に注連縄がかけられたものは、実際行っていない人でも写真などでご覧になったことのある人は多いと
臨死の父何思(も)ふ真夜(まよ)のほととぎす 山田径子
「点滴の父」というタイトルがあって、 点滴を抜けば死ぬ人薔薇散華という句があるから、いまわの際の父との別れのときを詠んだものとわかるのである。臨死の父は何思う、といわれても、実際は何か思うほど冷静な意識があるかどうかわからない。とはいえ、遺された
カツカレー食べて干潟(ひがた)の鳥を待つ 長澤寛一
干潟で鳥を待つとは、どういうことか。食べ物を食べてまで待つということは、長時間待っているということだ。おそらく写真家が干潟に憩う鳥の写真を撮るため、そのシャッターチャンスを朝からずっと待っているようなスチェーションが、この句の背景にあるのではないか。もち