小島てつを「人生が見えるから俳句(時々短歌)は面白い」ブログ版

最近、最新の優れた俳句(短歌)を紹介し、俳句(短歌)の幅の広さ、その奥深さを堪能していただけましたらありがたいです。これをきっかけに俳句(短歌)を作る人がふえてくれたら、最高です。

アーカイブ:2019/05

富士よりの寒さ来てゐる椅子の影     梶原美邦

作者は神奈川県相模原市在住。富士山はきっと間近に見えるのだろう。間近である分、山頂付近の雪の形などもよく見えるから、かえって寒々とした気分になるかもしれない。以前、富士山の絵ハガキセットを買ったことがあるが、四季の富士山の姿のなかでやはり一番惹かれたのは

湯畑の湯気盛り上ぐる春の雪     戸恒東人

湯畑とは温泉の源泉を地表や木製の樋に掛け流し、温泉の成分である湯の花の採取や湯の温度を調節する施設のこと。群馬県の草津温泉の湯畑がよく知られている。草津の冬はよく雪が降る。湯けむりと雪の風情はなかなか乙なものだ。時には春になっても雪が降り、来た湯治客を楽

若草に腰置き昔ばなしかな     加古宗也

若草は春の草をいう。年が変わり枯れ草から新しい芽が伸びて葉を茂らせていく。そんな若草にすわり、昔ばなしを語り合うのはよいものだ。すわり、と言わず、腰置き、というから、おそらく年配の女性が二人、若草によっこいしょと腰を置いて、楽しそうに語り合っている情景が

天体の動きも止まるほどのどか     高橋将夫

これほどの手放しのどかさを、現代人はどれほど感じる時があるだろうか。関東や東北の人たちは、大震災のあと、なんとなく落ち着かない日々の中にいる。関西人も大震災を経験しているし、ほかの災害にもみまわれている。そういう意味では、日本全体が自然におびやかされ続け

北溟に鯤を眠らす冬の霧      大村敏行

北溟はホクメイと読む。鯤はコンと読む。筆者は、 北溟を北の海と理解している。鯤はクジラのように大きなオオトリのことだと理解してきた。この情景は、中国の古典荘子の冒頭に語られた壮大な世界である。この句の鯤はまだ飛びたつまえ、眠りについている状態。冬の霧につつ

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