変哲こと小沢昭一さんの句である。
小沢さんは、「東京やなぎ句会」のメンバーのお一人。ほかに永六輔や桂米朝、江國滋などがいた。選者には俳人の黒田杏子さんや中原道夫さんらが招かれて、日本橋三越劇場で華やかに公開句会をやっていた。
小沢さんは、一年分の句をまとめて鷹羽狩行先生に見ていただいているとあるときの講演で話されていた。それを聞いた私は、小沢さん、俳句に対し意外に真面目な方なのだなと思った。
掲句は、寒い日焚き火を囲む人たちがいる。少し距離をおいて見ると、焚き火を囲む人たちの後ろ姿がまるで影絵のように見えた。その影絵を見つつ直感的に「お互い背中が話し合っている」というふうに感じたのをそのまま詠んでいる。この句には幼児が感じるような素朴な驚きがあり、そこが面白いのである。小沢さんのエッセイ集「散りぎわの花」参照。