檀一雄はいろいろな小説を書いてきた作家だ。ロマンに富んだ放浪ものや実体験をもとにした評伝や恋愛ものがあるかと思えば時代小説も書いている。
晩年の大長編「火宅の人」は、今まで書いてきた私生活ものの集大成といってよく、大変売れて、のちに映画化もされ話題を呼んだ。
掲句は、亡くなられる際、ベッドで書かれた遺句ということで報道された。筆者もそう記憶している。「花に」の「に」がカタカナの「ニ」で書かれていたため、その表記で各紙誌に紹介され、その表記がその後ずっと踏襲されて来ている。
モガリ笛が毎晩聞こえてくる。モガリ笛は、虎落笛と書く。冬の、柵や窓に当たりヒューと鳴くような激しい音がすることあるが、その不気味な音を言ったもので、冬の季語。自分はもう直ぐ死ぬのだ。今夜なのか、明日なのか。まもなくお迎えがくる。だが、死んでも美しい花に逢いたいものだ、そんな花園に行けたらいいな、という願望の気持ちを、彼らしくストレートに詠んだものである。
1976年、63歳で亡くなった。その死はあまりに早く訪れた。女優の檀ふみさんは娘さんである。