梅沢富美男さんといえば、(失礼ながら、お若いころ)下町の玉三郎いといわれた美女?姿は多くのファンの心を掴んだし、歌謡曲「夢芝居」が大ヒットしたことでも知られる芸能人だ。
筆者が「プレバト」という番組を見始めたのは、ここ二、三年ぐらい前のこと。もちろん梅沢さんが俳句を作るなど知らなかった。ところが、番組の俳句選者の夏井いつきさんとの掛け合いなどを聞いて、梅沢さんが俳句の腕をメキメキと上げていることを知った。
さて、掲句。遺影という素材を使って、人間の生命の尊厳を表している。飛行機の座席に人が座らず遺影が置かれているという。そうしたのは、亡くなられた人の身内の方の想いからなのか、仕事上の関係者が亡き人を讃えた行為だったのか、その辺の詳細は語られていない。
が、その人間性に心温まるものを感じることが出来るのである。その、心の温もりが季語「秋夕焼」によってより強く理解されるのである。梅沢さんにはこんな句もある。

廃村のポストに小鳥来て夜明け

この句、廃村に追い込まれた住民に対する想いが感じとれる。ポストに来る小鳥を描くことによって、住処を失った人間の悲しみがよく表れている。

老境に入られた梅沢さん。俳句は、やはり老人の文芸なのか。圧倒的に梅沢さんの同世代の人たちによって俳句は支えられている。それが現実であると思った。