35度あった気温がここに来て一気に5度ぐらい下がった。昼の蝉の鳴き声は消え、夜の虫の鳴き声へと急速にかわったこのごろである。
さて、掲句。虫は静かな声で鳴きとおしている。ここからここまでという堺目がなく、闇という闇すべてで鳴き響いている。まるで闇全体が虫の世界になったようだ。一方、空を見上げると、闇のなかに月が浮かんで見えたかも知れない。その月を見ながら、今私のいる地球の位置を考える。地球が全天体のなかでどのようにあるのか、想像は広がってゆく。私の命を生み育んでくれた地球。不思議な天体。そんな地球は闇の中に浮き、星空のなかにも浮いている。もっと大きな視野で見ると、闇は地上も空もない。極楽浄土。すべて虫の闇。全宇宙が虫の世界のように感じられてくる不思議。不思議な虫の鳴き声には、人の心を慰めてくれる癒しがある。仏教哲学者だった作者らしい句。先年亡くなられた。俳句あるふぁより。