「樹も石も」、たしかに縄が巻かれるとおごそかな雰囲気になるから不思議だ。神の本体と見なされるのである。
一番よい見本が、伊勢の二見ヶ浦の夫婦岩であろう。2つの岩の間に注連縄がかけられたものは、実際行っていない人でも写真などでご覧になったことのある人は多いと思う。古来日本人は、木や岩に神が降臨し、宿ると思われていたのだ。(民俗学的にはアニミズムといわれる)  だからそこに注連縄をかけ、お祈りを捧げた。
那智、日光華厳をはじめとするさまざな滝もそうだ。この句は、最後に「滝しぶき」といっている。滝は固定したものでなく、いつも水を落下させて動き続けている、そういう意味では、滝の水は生きている。生きて動いている。その生きたしぶきが、また樹や石にかかり、それらすべてが神韻縹渺とした存在に生まれ変わり続けるのである。
樹(たちき) 2019.9