鯉の口はたしかに印象的だ。池のなかでいつもパクパク動かしている。ふつう、口を開けば水が身体中に入って、苦しいはずなのだが、そうはならない。しぜんには、理屈で割り切れないことが多々ある。それが面白いし、俳人はそういう現象に焦点をあてようとする。この句もそうだ。あの鯉のクチパクから、きっと何かを言っているに違いないと捉えたくなる。いまは春昼。これからの午後の時間はゆったりとしたやさしい日差しのもと、時が止まったように感じられるかもしれない。そんな思いの中、鯉が何をつぶやいているか、非常に気になるところではある。暖響2019.6