朧は朧月夜などと言うように、春特有のアイマイモコとけむるようなとりとめのない状態をさす。そんな夜に、犬が水を呑むいきのいい音だけがはっきりと聞こえてきたというのだ。おそらく舌を巻いてピチャピチャピチャという音を響かせて水を呑む音が聞こえてきたのだろう。犬にとって水を呑む動作は、まぎれもなく生きていくための生命の営みだ。その響きは、アイマイさを突き破る、動物にとっての根源の欲求なのである。その音を聞き、たじろぎつつも、愛しい生き物を見守る作者の慈愛の眼差しが感じられる。雉2019.5