「朝日新聞」2020年4月19日歌壇、永田和宏選より。災厄などがあると、大雨が降って洗い浄めで欲しいと思うことがある。コロナに対する「弥生みそかの雨」を、作者はそう感じたのである。雨の表情は優しい。弥生は3月。みそかは月末のこと。しかし、この後新型コロナウイルス
父母の墓父母の姿に陽炎(かぎろ)へる 萩原豊彦
「朝日新聞」2020年4月19日俳壇、高山れおな選より。父母の墓がある。だいたい一基だ。ひとつのところに父母のお骨は納められている。仲の良い両親だったのだろう。その墓石が、両親の姿のように陽炎で揺らめいているという。古き良き日本のローカルな風景だ。美しい。作者は
クルーズ船二月の孤絶の景となる捕らへられたる白鯨として 梅内美華子
「短歌往来」2020年4月号より。日本人がまだ新型コロナウイルスというものを十分理解できていなかったころ、あのクルーズ船問題が起こった。横浜港に停泊した巨大なクルーズ船の映像を見るたび、船中で待機させられている大勢の乗客のことを思った。船自体、動かすことができ