小島てつを「人生が見えるから俳句(時々短歌)は面白い」ブログ版

最近、最新の優れた俳句(短歌)を紹介し、俳句(短歌)の幅の広さ、その奥深さを堪能していただけましたらありがたいです。これをきっかけに俳句(短歌)を作る人がふえてくれたら、最高です。

俳人・歌人の、特に優れた作品を読むことで、今を生きる読者(または実作者)のみなさんのこころに少しでも癒しの風が吹いてくれたらいいなと念願して、今日も鑑賞を書きます。ご感想なだお寄せいただければうれしいです。

落蟬に全天のこゑふり灌(そそ)ぐ  鈴木貞雄

「全天のこゑ」とは、いうまでもなく蟬の鳴き声だ。何千、何万という蟬の鳴き声が、地上に落ちた一匹の蟬に降り注いでいるという。落ちた蟬というのは、死にかけた蟬だ。その蟬をまるで見送るように、木の上の蟬たちは必死に鳴き叫んでいる。自然界ではあらゆる生き物が生と

籐椅子やどこへも行かぬことも旅  橋本喜夫

籐で編んだ椅子は、くつろぐためのものである。外が見える窓辺近くに置かれていることが多く、座るひとは高齢者というのが定番だ。そこで新聞を読んだり、テレビを見たりする。本当なら、今頃温泉かどこかに出かけていたはずなのだが、新型コロナウイルスのため、不用不急の

泣いてゐるやうにも見えて髪洗ふ  蟇目良雨

わが師、野澤節子に、「せつせつと目まで濡らして髪洗ふ」という句がある。時間をかけて髪を洗う雰囲気は女性的である。いっぽう、掲句は比喩の句。昔の流行歌の中に、「泣いているような長崎の街」という一節があった。髪を洗う時の表情を、比喩をもってリアルに捉えている

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