筆者は、俳句という文芸は、作者をまったく知らないより、少しぐらい知っていたほうがより深く理解できると思っている。もちろん、知りすぎ、はかえってマイナスになることもある。ここのところが難しい。俳句はもともと座の文芸だから、顔を付き合わせて、それぞれの句を理
母と娘(こ)に生まれあはせし花野かな 正木ゆう子
母がいて、子(娘・私)がいる。どういう巡り合わせで、今、二人が生きているのか?秋の草花が一面に乱れ咲く花野。爽やかな風に吹かれている。ふと、広い世界の中で、私という存在はなぜ、この母の娘として生まれてきたのか? そのことの不思議を思う。親子と簡単にいうが、
薄荷(はっか)咲く子ども以外の事話せ 櫂未知子
薄荷。日本各地の野原に生育し、丈は20〜60センチ。葉は楕円形。8月から10月にかけて葉腋に淡紫色の小さな唇形花をつける。子を持たない身にとって、子どもの話ばかりする人たちの中にいなければならないことは、耐えがたい苦痛である。そんな思いをストレートに詠んだ句。ピ